ベテランのトヤさんも、
最初は悩み多き若造だった。
専務は豊島さんのことを普段何と呼ばれるんですか?
- 戸谷
- 「豊島」やね。下の名前は親が呼ぶものと考えてるから、私は上の名前を呼ぶようにしとる。
- 豊島
- トヤさんは協力会社さんに対しても同じですよね。
- 戸谷
- 美学というか、自分なりにそれが良いと思ったんだよね…。今は、若手にならってニックネームで呼ぶことも増えたけど。
そう言われると、名字を呼ばれるのでも一味違いますね。
豊島さんは、戸谷専務から仕事を教わったんですか?
- 戸谷
- いや、豊島は最初から独り立ちしてたよ。入社した時から即戦力。
- 豊島
- 私、転職で入って、前職も土木なんです。私の世代は経験者が多かったかもしれないですね。
今までに印象的だった仕事についてお聞きしたいです。
- 戸谷
- 私は、30年ほど前の安八町の下水道布設かなぁ。住宅地での初めての仕事でした。古沢組が自治体から直請けするようになったばかりの頃だったので、プレッシャーも大きかったですね。
道路を掘削して水道管を通して、夜間は穴の上に鉄板をかぶせて養生するんだけれど、車が通るたびにガタンと音が鳴るでしょ。苦情が来るんです。鉄板の上にゴムや砂を敷いたり、色々やっても音は消えない。悩んでね、結局一般住宅の前は1〜2日の短期にして、日中のうちに埋め戻しまで終えるように段取りを変えました。「夕方からもうひと掘り」ってわけにいかなくなって効率は落ちたけど、住民の皆さんからの苦情は減りましたよね。 - 豊島
- トヤさんにもそんな時期があったんですね(笑)
- 戸谷
- 初めてだったからね。失敗を挙げたらキリがないよ。この年まで来たら腹も座ったけど、若い頃はどうしようどうしようの毎日やった。
大変だったけど、下水を整備してからは環境も良くなったよね。水がキレイになって田んぼにドジョウも戻った。
時代とともに
変わってきたこと。
変わらないこと。
現場で発生する難問への対策は、その都度臨機応変に考えられるんですね?
- 戸谷
- そうです、そうです。トラブル対応だけじゃなしに、作業を工夫するということもありますね。
水路の工事で、水路は堰き止めるけど水は流し続けないといけないって現場では、自分で鉄板をくり抜いて「水門」みたいな道具を作りました。昔は100個とか土嚢を作って積んで止めていたので、少しでも楽をしようと思って(笑)
自分で考えてそういう工夫ができる余白があるのは、面白さでもあるでしょうね。現場自体は昔とは何か変わりましたか?
- 豊島
- 造るもの、やるべきことはそう変わらないと思います。
- 戸谷
- ただ、機械が進化して、測量なんかが楽になったとは思うね。この間うちに入れた3D測量機は1人でも測量できるので、だいぶ便利になったよね。
- 豊島
- 私が入社した頃は、仕事が忙しすぎて人手の確保に苦労した記憶がありますね。100〜200mの道路の新設をするのに作業員が足りなくて。
それはどう乗り切ったんですか?
- 戸谷
- んー…工期が迫ってきたらできるだけ人手を回すようにはしてたね。ただ工期が決まってるから、はじめの段階では1人でも2人でも現場を動かすしかなかった。人が確保できた時にすぐ動かせるように準備しないといけないから。
- 豊島
- 正直、当時は休んだ覚えがないですよね。
あ、でも、今は休日もちゃんと休めてますので安心してください。会社ももう無理には仕事を請けなくなってるし、休みの日は私もYouTubeなんか見てボケっとしてます。 - 戸谷
- 協力業者さんとの付き合いが長くなって、腕のいい人に安定的に来てもらえるようになったのが大きいかな。
- 豊島
- そうですね。今は顔馴染みの職人さんと組むことが多いですね。
むしろ必要な時優先的に来てもらえるような関係づくりが大事ですかね。
施工管理者の仕事と、
土木の魅力について。
協力業者さんにはどんな方がおられるんですか?
- 豊島
- 工事の中身によって色々です。
例えば道路の維持管理や新設ですかね。 - 戸谷
- 道路新設では、測量、掘削から構造物を造るまでがひとつのプロジェクト。余程忙しい時なら自分達で重機を動かしますけど、基本は協力会社さんに土工事から任せます。1社で完結することもあるし、工種で分けて型枠大工や鉄筋工、路盤の改良などの専門職を手配することもあります。あとは舗装屋さんとか、防護柵屋さんとか。
- 豊島
- 長く続いてきた職人さん達とは気心が知れているから信頼できるし、安心ですよね。
どうやって信頼関係を築いてきたんですか?
- 戸谷
- どうやって…?難しいね。
相手の意見を尊重するようにはしてます。工期も予算も決まっているのでお願いすべきことはしなきゃならないけど、私達はこういう性格なもんで、現場で怒鳴るようなことはないですね。 - 豊島
- (うなずく)
職人さんと絶えず話をして、作業や時間に無駄が出ないように段取りはします。
発注者側と交渉することもあるので、自治体さんとの関係づくりも大事にしてます。 - 戸谷
- 今年の年度末はハナから厳しい現場もあったけど、あちこちに融通を利かせてもらえたから何とかなったね。運が良かった。
協力してもらえる関係を築いてこられたってことですね。
おふたりは、どんな時に土木の仕事の魅力を感じますか?
- 豊島
- そうですね、現場が終わった時ですかね。終わると一気に解放されます。現場も毎回違うので、その度に気分も変わります。
- 戸谷
- 現場が終わって、1~2週間は報告書作成しながら体を休めて、検査まで終われば一段落やね。時々他の現場を手伝いに行ってリフレッシュしたりね。
私は、学校で土木の面白さを教えてもらって、その流れでここまで来てる感じですね。 - 豊島
- 私が仕事を続けてきた理由には、自分で動かなかったら現場が納まらないという責任感もありました。仕事を請けたからには、自分の責任を果たしたいと思っているので。
- 戸谷
- 体を動かしてみなければ分からないことはやっぱりあるんですよ。いずれ上に立った時に、その作業にどれだけ時間がかかるか、どのくらいの金額になるか、泥がどれだけ硬いか、知っているのと知らないのとでは全く違うもんでね。教科書通りにやっていればいいことなんてほとんどない。学力も要るけど、経験も要るんです。
- 豊島
- 新たに入られる方には、自分で考えて仕事ができるようになってほしいですね。土木の仕事って、ある程度の自由度があります。決められた仕事をどうやるかは自分次第なんです。
- 戸谷
- その分、自分がしたことは自分に戻ってきます。いい加減にやればその評価がついてまわる。だから私は、手を抜かないように、真面目にやろうとは考えてやってきたつもりです。
- 豊島
- 古沢組の土木事業は地元の仕事が多く、協力企業も、近隣の方や発注者さんとも顔見知りだったりするので、下手なことはできないです(笑)
また、現場が近いと移動時間が短いので、そういうのも良いところかも知れないですね。
なるほど。多くの方に、土木のやりがいが届いてほしいと思います。本日はありがとうございました。
fin.